周産期医療センター、妊婦搬送大都市ほど拒否…読売全国調査 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20081102-OYT8T00177.htm?from=nwlb
 都立墨東病院がいったんは妊婦受け入れを拒んだのは「土曜日で当直医が1人しかいない」との理由だった。調査で土日や夜間に「1人体制」の時があるとしたのは34か所。その多くは規模が小さい地方のセンターで、待機医師の呼び出しで対応していた。「(大都市部と違い)うちが断れば、ほかに受け入れ先がない」(山口県立総合医療センター)といった声が複数あり、地方で当直体制が厳しいにもかかわらず、受け入れ拒否が少ない背景として、責任体制の問題も関係しているとみられる。

この記事は「地方に比べると大都市の病院は責任感がない」と言いたいのでしょうか。だとしたらおかしな話です。

患者を受け入れられない状態にあることを伝えるのは、いけないことなのでしょうか。十分な対応ができないことをわかっていながら簡単に受け入れてしまうことの方が無責任でしょう。

地方では「受け入れ拒否が少ない」などと書いてありますが、他に受け入れ先がないことや、当直中の医師だけでは対応できないことに関しては問題にならないのでしょうかね。かなりまずいことだと思うのですが。

問題にすべきなのは、地方でも大都市でも十分な受け入れ態勢ができなくなっていることのはずです。「受け入れ拒否が・・・」などということではありません。読売新聞のこの記事は、問題にすべきところが違うのではないかと思います。

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ところで「待機医師」というのは何を指すのでしょうか。「勤務時間ではないが病院内で待機している医師」のことでしょうか?それとも「自宅にいるが、連絡があればすぐ病院に駆けつける」ということなのでしょうか?どなたかご存知でしたら教えてください。

[追記]
読売新聞の別の記事を見ると「無責任」呼ばわりしていました。

[解説]8病院拒否 妊婦死亡 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20081028-OYT8T00224.htm
 一方、都市部では、地域の救急医療に最終的な責任を持つ病院が決まっておらず、結果的に“集団無責任体制”に陥っている。地域ごとに、責任を持って患者を受け入れる病院を明確にしておく必要がある。
そもそも「受け入れ拒否」ではなく「受け入れ不可能」なのですから、責任だけ負わせようとしても意味がないのですが。

コメント

ブログ脳外科医
2008年11月3日18:47

受け入れ体制が不十分なのに患者を受け入れるのが責任感ある医師だなんて本末転倒な話です.そんな医療を患者が望んでいるとは思えません.こういうことを常態化させて放置する病院や行政こそ無責任だと言われるべきでしょう.

地方では他に受け入れるところがないので仕方なく受け入れているのでしょうが,そのために患者や家族とトラブルが起きるから医師の逃散が起きているという事実をマスコミも厚生労働省も認識するべきです.

一度,救急医療から逃散した医師はもう戻ってこないでしょうし,研修医だけで救急はできないですから,このままでは救急医療が完全崩壊する日もそう遠くないのではないでしょうか.

ブログ脳外科医
2008年11月3日20:25

「待機医師」というのは,「院内にいる必要はないが呼び出しがあったら駆けつける医師」です.待機中は遠くに外出したり,プールや温泉に行ったり,酒を飲んだりすることはできません.呼び出しがあれば普通は僅かばかりの手当が出ますが,待機状態には手当はないのが普通です.そして,地方の病院ではこの待機が2日に1回ほどもあったりするのです.予算がないからと,未だに医師の善意に依存するつもりなのでしょうが,そんなところで働きたい医師はもういないのではないでしょうか.

リノール
2008年11月3日23:46

ブログ脳外科医さん

>「待機医師」というのは,「院内にいる必要はないが呼び出しがあったら駆けつける医師」です.

そういうことだったのですね。ありがとうございます。

救急医療は医師のボランティアによって成立しているようなものだと聞いたことがあります。善意に頼る一方で、責任ばかり求められるようになっては、誰も働きたくないでしょう。医師に対して、随分と自分勝手な要求をしていたことになるのですね。

さしあたって国とマスコミと患者(将来患者になる人も含む。要するに全国民。勿論私も)がするべきことは、「現状を理解すること」でしょうか。