ISBN:4152087706 単行本 佐藤 桂 早川書房 2006/10 ¥2,100
お正月ということで、今年も出かけてはいたものの、空いた時間ではゆっくり本を読むことができました。
1519年、新大陸の地に降り立ったスペインの征服者たちは、市場を埋め尽くす鮮やかな赤に目を奪われた。光り輝く色彩はまさに生命の炎であり、魂を揺さぶる情熱の色。これこそヨーロッパの人々が、そして彼らの王が権威の象徴として求めた完璧な赤だった。
この色をヨーロッパに持ちこめば巨額の利益を生む―スペイン人たちは製法から原料・産地にいたるまでを国家機密とし、完全なる秘密主義を貫いた。そのため18世紀まで原料の正体すら明らかにならず、イギリス、オランダ、フランスなど各国は躍起になってスペインの輸送船団を襲撃させ、新大陸にスパイを放った。市民のなかには正体をめぐって全財産を賭けた大博打に出る者まで現われた。はたしてその正体は、植物の根?種?花?それとも動物の糞か、虫か?国家も民衆も翻弄し、ヨーロッパ全土を競争へと駆り立てたその染料の名はグラナ。現在ではコチニールとして知られ、身近な食品や自然派化粧品などに使われている。
大航海時代から現代まで脈々と受け継がれてきた新大陸の秘宝をめぐる息もつかせぬ歴史ロマン・ノンフィクション。


この『完璧な赤』は1年以上前に購入したのですが、なぜか読みかけのままになっていましたので今回改めて読んでみました。
序盤は少々退屈に感じたのですが、コチニールを狙う海賊や「植物か虫か」といったあたりは非常に楽しく読めました。

それにしても、赤い色のためにこれほどの大事件になるとは思っていませんでした。赤は「富と権力の象徴」とされていたからでしょうか。私の場合、赤といえば「5人組のリーダー」くらいしか思いつかないのですが…

尚、著者のサイトでは本の内容と一緒に“Amusements ”として、コチニールとスズから真紅を作り出す実験を再現した記録や、メキシコのコチニール農園や染色工房を訪ねた様子も紹介されています。英語なのが少々難点かもしれませんが、ウチワサボテンについたコチニール(綿毛のように見えるのがコチニールです。エンジムシとも呼ばれています)や、真紅に染められた毛糸などが写真でも紹介されています。興味のある方はそちらもご覧になってはいかかでしょうか。

A Purfect Red By Amy Butler Greenfield(著者のサイト)
http://www.amybutlergreenfield.com/index.html

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